秋日
「これではきりがないですよ〜」
庭を掃きながら沖田がためいきをついた。
「あのなあ、巻き添え食らった俺らの身にもなれってんだ」
原田が箒を振り回して言った。
紅葉の時期も終わりに近付いて、屯所の敷地内も葉を落とす木々が増えてきた今日この頃。
非番だった沖田は土方の部屋で暇を持て余して
副長が嫌そうに眉根を寄せているのをものともせずにじゃれついていた。
「・・そんなに暇ならな」
「はい?」
「庭の掃除でもしてきやがれっ!」
俺は忙しいんだと、何度も失敗したらしいクシャクシャに丸められた
いくつもの書類の出来損ないの残骸を投げ付けられた。
「あーあー、苦手なことばかりしてると禿げますよ」
山南さんに任せれば良いのに。そこまで言ったとき
ピクリと土方の眉がつりあがり、ついには部屋を追い出されて今に至る。
「あれ?みなさんおそろいで掃除ですか?」
珍しいとあからさまに目を見開いたセイが庭へとやってきた。
「・・・好きでやってんじゃねぇのよ。これが」
永倉が箒の柄に顎を乗せてポソリと吐いた。
「何を抱えてるんです?」
沖田が目敏くセイが抱える風呂敷を指差した。
「街で偶然為三郎さんたちにお会いしたんです」
最近忙しくて遊ぶことが出来なかった八木家の子供達と久し振りに遊んで、
その後挨拶にいったらお土産にもらったという。
「で?何なんなの?」
藤堂に言われてセイはにんまりと意味あり気に笑った。
「おいもです♪みなさん良い処にいらっしゃいましたv」
風呂敷を開いて皆に戦利品を見せる。
「よっしゃ、それならがんばってやるかー」
原田と沖田が顔を見合わせて腕を振り上げた。
「おーおー、さっきまでとは大違い」
「ぱっつぁんも働けよー」
「へいへい」
テキパキと枯れ葉を集めていく原田たちに箒の先を突き付けられて永倉も庭を掃きにかかる。
「・・・・・・・・」
あまりにも現金なその様子にセイは少し引き気味。
「食いものの力って凄いよね」
セイの隣で笑った藤堂も沖田に呼ばれて箒を掴む。
しばらく取り残されていたセイだったが、あらかた庭掃除は終わっていたので
芋を焼く用意をしようと屯所内へと駆けていった。
「・・・・・・これはどういうこと?」
戻ってきたセイに藤堂が声をかけた。
「・・・・見つかってしまいました^^;」
セイの後ろには斎藤や山口たちまでいる。
「取り分が減るじゃねぇかよ」
原田が箒でシッシッと追いやった。
「・・・・ほぉ。そんなことをして良いのかな?」
斎藤は後ろ手に隠していた酒瓶をちらつかせた。
他の隊士も密かに隠し持っていたらしいつまみやらどこからか失敬してきたらしい食べ物を差す。
「・・・・ちっ、仕方ねぇなぁ」
永倉は斎藤から酒瓶を受け取ると上機嫌で焚き火の側へと促した。
「神谷さん、ホラ。できてますよ♪」
「あ、はい」
出来上がった焼き芋を受け取る。
そして出した分、また新たに芋や隊士が持ってきた南瓜等を焚き火の中にくべていく。
「・・・・足りるのかなぁ」
「楽しめれば良いんですよ」
少し不安そうに呟いたセイに隣りに並んだ沖田が声をかけた。
池田屋の事件に続き、隊士募集等でドタバタしていた屯所内。
組長達は新人の指導等に神経を使ったりと少し疲れ気味だった。
そんな折でのこの機会。気晴らしには丁度良い。
「はい」
促されて周りを見回すと、新人隊士や古参隊士が一緒になって酒を酌み交わしたりしている。
「オラオラ、神谷も飲めー」
既に出来上がっている原田がセイの首にガッシリと腕を回すと杯を差し出した。
「あ、あの、私酒は・・・・・」
「原田さんっ」
「・・・・・なんだぁ?」
沖田が止めに入るよりも早く、斎藤がグイッとセイを原田から引きはがした。
「・・・・俺が相手をしてやろう」
冷ややかな視線に原田は一瞬だけ悪寒を感じて、ただその得体の知れない迫力に首を縦に振ることしかできなかった。
「兄上っ」
酒を飲んでの失態がいくつもあったので、セイは助けて貰った事に気づいて斎藤を呼んだ。
斎藤は原田を引きずりながらセイに向かって手をヒラヒラと振った。
「あにうぇぇぇ」
「斎藤さん、かっこいい・・・・」
セイの隣で沖田が呟いた。
「ささ、神谷さん。火に当たりながら楽しみましょう」
「・・・はい」
(・・・何故俺はこんなところに・・・・)
小さな宴会になってしまった屯所内。
楽しげな笑い声が響き渡る中、
焚き火を挟んだ向こう側で楽しそうに談笑する沖田とセイに
心の底から大きく溜め息をつく斎藤の姿があったという。
楽しげなトタバタな内容が少しの間なかったなと思いましてこのSSできました。
焼き芋vv南瓜も甘くて私は好きです^^
2004.10.30 空子
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