天の邪鬼

夕餉の時間。

10代20代が大半を占める新選組は、食事の量が半端ではない。

稽古や巡察で疲れているにもかかわらず、

この若い集団は一日の楽しみとばかりに食事時も賑やかだ。

「沖田先生、どうぞ」

「神谷さんは・・・?」

「私は後でいただきますので・・・」

セイがてきぱきと沖田の食事の用意をこなしていく。

「よ、世話女房」

まわりの隊士達からヤジが飛ぶ。

「なっ、何をおっしゃるんですかーっ」

真っ赤になったセイがしゃもじを振り回して抗議する。

「まぁまぁ、押さえて。ね、神谷さん」

沖田がセイをあやすように言った。

「はい、あ、お茶ですね」

沖田へと視線を戻し、湯飲みにお茶を注ぐ。

 

 

以心伝心かよ

 

 

見ちゃいられないと隊士達は複雑な思いを胸に

手元の食事に手をつけた。

 

 

「神谷さん、沖田先生とあんた、実際のところどうなんだよ?」

新人隊士の中村五郎が庭先を歩いていたセイを捕まえて聞いた。

「・・・何のことだ?」

セイは身構えた。

なんとなく、この隊士が苦手だ。

本当にわかっているかどうか理解できないけれど、

自分の事を女だと断定してくる。

女として好きだと言ってくる。

 

 

ちょっと、怖い。

 

 

「神谷ーっ、沖田先生が呼んでたぞー」

廊下から一番隊隊士の呼び声。

「はーい」

中村へ一瞥をくれてやり、セイは走っていった。

 

「沖田先生はどちらです?」

呼んでくれた隊士に声をかけると、

「いやぁ、沖田先生にベタ惚れの神谷が

新入りに言い寄られて困ってるみたいだったからさ」

「なっ、なっ、何言ってるんですか〜っっ」

「照れない照れない。あ、ホントにお呼びみたいだぜ」

隊士が指さした方を見ると、沖田がセイを手招きしていた。

 

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