花を抱く君
山南さん、オレ、どうしたら良いのかな・・・?
山南さんが切腹して一ケ月近く経って、
悲しんでいる間もなく屯所は移転。
日々は変わらず過ぎていく。
戻ってみれば、新しい我が家。落ち着かない・・・。
心は順応できずにいて、ぽっかりと穴が空いたままだ。
(オレ、置いてかれてばっかだなあ)
おゆうちゃんにも、山南さんにも。
縁側で一つ、溜め息をついた。
「溜め息なんてつかれて、どうなさったんですか?」
「わっ!神谷かぁ。ビックリしたー」
セイも驚いたようで、
手に持っていたお盆がひっくり返らないように慌てている。
「もうしわけありませんっ」
体勢を立て直してセイが頭を下げた。
「いいよー。それより、急いでるんじゃないの?」
「そ、そうでしたっ。失礼します」
頭を下げて、セイはパタパタと廊下を急ぎ足で行った。
(見ててあきないよなあー。)
後ろ姿を見送り藤堂は思った。
また、一つ溜め息。
隣にストンと腰を下ろす気配。
「藤堂先生、いただきものですがどうぞ♪」
差し出されたお盆には、たくさんのお菓子と暖かいお茶。
「ありがとう」
ひとつ、包みから出して口に運んでみる。
「うまい」
「良かった♪私も、ここのお菓子好きなんです」
セイが嬉しそうに笑った。
「神谷さん、藤堂さんにだけずるいですよ〜」
どこからかぎつけたのかやってきた沖田がお盆の上のお菓子に手を延ばした。
「藤堂先生にとお持ちしたんですー。あげませんっ」
セイがお盆を上げる。
「うぅ、ひどすぎる」
沖田が藤堂に張り付いた。
「あはは。ほら総司」
一つ渡す。沖田は至極幸せそうに口に運んだ。
「なんだー?三人でこそこそと」
沖田の声が聞こえたらしく、奥から永倉と井上がやってきた。
「うまそう」
井上がひとつかみ。
「藤堂先生、もうしわけありません〜。足してきます」
騒がしくなってしまった周りにセイは申し訳なさそうに頭を垂れた。
「いいんだ。楽しいしね」
セイの頭をくしゃりとなでた。
セイがほうっと胸をなで下ろした。
(よく気がつく子だから、心配してくれたんだろうな)
セイには華があると思う。
周りには自然に人が集まって、憩いの場になる。
不思議な子だと常々思う。
「総司、大事にしなきゃダメだよ」
「え?」
藤堂の隣でお菓子に没頭中の沖田は、
突然のことにきょとんとした顔をしている。
藤堂は何も言わず笑った。
仲間達との時間に、心が温まる。
今は、この平和な時が続いていて欲しいと切に願う・・・。
怒濤の7年。
生きに生きた彼らは、
全員花を抱いていると思います^^
空子は平ちゃん大好きです。
本誌の方でも、その時が確実に近づいてますよね。
平ちゃん、思いとどまってはくれないのでしょうか・・・。
2003.07.26 空子
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