まだまだ肌寒くはあったけれど、

日も長くなり町の至る所に春の訪れを感じられるようになってきた今日、

中村は珍しく一番隊と非番が重なったので、屯所内をセイの姿を探して歩いていた。

 

(一目だけで良いんだけどなぁ・・)

 

遠くからでも良い。

会うことができると厳しい隊務の中にあっても一日気持ちが軽くなるのだ。

正真正銘に男子だということが判明したけれど、

そう簡単には気持ちが切り替わるわけもなく、逆に想いは募るばかり。

 

「ぁ・・・」

 

小さくつぶやいて慌てて両手で口を押さえた。

廊下の角を曲がろうとしたとき、先に人の気配を感じてこっそり覗くと

セイが縁側に腰をかけて庭を眺めていた。

たまに吹く風がセイの髪をフワリと揺らす。

縁側は日当たりも良く、

心地好いのか気持ち良さそうに口許に笑みを浮かべて目を細めたりしている。



(かわいいよなぁ)



その様子を何時までも見ていたくて、中村はその場を動けずにいた。

 

 

 

どれくらいそうしていただろうか。

「中村さん?」

突然声をかけられて驚いて振り向くと、

自分の反応に驚いた顔をした沖田。

「お、沖田先生?

突然の沖田の登場に心底驚いて胸元を握りしめた。

「どうなさったんですか?廊下で立ち止まったりして・・・」

不思議そうに沖田が首を傾げた。

「い、いえっ。何でもないんですっ。しつれいしますっっ」

「なんでしょうねぇ」

不思議そうに沖田が中村を見ると、

中村は慌てた様子で頭を下げて踵を返してバタバタと走っていった。

 

 

 

走って、走って、呼吸が少し苦しくなったところで足を止めた。


(沖田先生なら、あの空気に溶け込めるんだろうな)


側にいることが自然で、穏やかで・・・・。

 

きっと自分には無理だけど。


思うとチクリと胸が痛んだ。

 


「なんだ、中村。ぼーっと突っ立って」

後ろから虫干しでもするのか書物を大量に抱えた隊士がやってきた。

「いえ、なんでもありません」

道を譲ってやりながら中村が応えた。

「そうか」

さして興味もないといった返事を返してきた隊士を見送って、

中村は暖かな陽射しが差す庭へと目を向けた。

 

ふわり

 

風が頬を撫でる。

心地よくて目を閉じた。

先程の様子を思いだす。

 

ふわりとかすめてセイの髪を揺らし通り過ぎていく春の風。

頬が熱い。

鼓動が早い・・・・・。

 

 

今回は、中村君視点で春を感じてもらいました^^
悪い子じゃないと思うし、想うことは自由かなとか・・・・?
想い方(?)もそれぞれかなとか考えたらこういうお話になりました。
イメージは、大好きなト○ロのあの曲で・・・^^

2004.02.01  空子

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