初雪

 

「さむっ」

セイは里の隣に布団を並べて眠っていたが寒さに目が覚めてしまった。

寒さが厳しくて布団の温もりが心地好い。

(・・・何時くらいだろう?)

 

障子の隙間から入る細い光は明るくて、

日が昇っている時刻だということはわかった。

こんなにゆっくりできる場所があるなんて、とっても幸せなことだと思う。

屯所にいたら、こんな時間まで眠れることは滅多にない。

隣に眠るお里さんは本当の姉のように自分に接してくれる。

 

(・・・・幸せ者だね)

 

セイはクスリと笑って起きあがった。

着物を整えて里を起こさないように、ゆっくりと部屋を出る。

 

はぁ



息を吐くと真っ白で、それが楽しくて軽い足取りで炊事場へと向かった。

 

 

「おセイちゃん、そないなことうちがするし」

里がパタパタと慌てて廊下を早足で来る。

「いいよー。お里さんは休んでて。これでも上手になったんだよ」

言いながらニッコリと笑う。

賄い方の手伝いをしているおかげで、里にはまだまだ及ばないけれど

少しは腕を上げたと思う。

「ほな一緒にね」

「うん♪」

並んでの用意となった。

「おセイちゃん、外にあるお野菜とってきて」

「はーい」

 

 

火気のあった内から外へ出ると、より一層寒さが感じられた。

「・・・・つめたっ」

鼻の頭に冷たい感触。

(雨?)

キョロキョロと見渡したけれど、その気配はない。

空を仰ぐと、ハラハラと舞い落ちる白い雪。

「雪だー」

頭に、額に、頬に雪が舞い落ちる。

掌を差し出すと、雪は軽いのかしばらく溶けずに掌の中にとどまった。

それが楽しくてしばらくその場に佇んでいた。

 

「神谷さんっ、何をぼぉっとしてるんですか?」

 

庭先から聞き慣れた声。

「沖田センセ?」

「なにしてるんですかー。カゼひきますよ」

近寄ってきて、パッパッと払う仕草をする。

「?」

「雪んこのようですねぇ」

セイは自分の肩口をみてちょっとビックリ。

降った雪は、溶けずにうっすらと白くつもっていた。

「どうされたんですか?何か急用でも・・・?」

用事もないのに、訪れるなんて何かあったのではないだろうか・・・。

セイの眉根が寄せられる。

「近くを通りかかったら、おいしそうな香りがしたもので、ご相伴に預かろうと・・・」

えへへと笑いながら沖田はぐぅと鳴ったおなかを押さえた。

「あ〜っ、そうでしたっ」

外へ出た本来の目的を思い出してセイは慌てる。

「あ、お待ちなさい」

沖田がすばやくセイの肩口の雪を払う。

「はい、仕上げ」

言いながら両手でセイの頬を包んだ。

「お、お、お、沖田センセ??」

状況が把握できたセイは口をパクパクさせる。

「冷え切ってますねー。カゼひかないように気をつけてくださいよ」

冷えた頬に感じた温かな掌に、しばらく身を預けた。

 

 

「おセイちゃーん」

炊事場から心配そうな里の声。

「あ、はーい。今いくー」

慌てて軒下から天然冷蔵の野菜をとりだす。

「沖田先生、私もお手伝いしたんです。

できあがる頃合いですから行きましょう」

「ホントに良いのですか?」

「いまさらじゃないですか」

くるりとセイが背を向けて歩き出す。

背後には後ろをついてくる沖田の足音。

 

そっと頬に手を当てる。

 

トクン  トクン  トクン


先ほどの温もりを思い出してセイは顔を赤らめた。


うちの総ちゃんは実は天然女たらし?
2003.12.23 空子

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