ほんとはね。

 

 

『おしくらまんじゅーおっされて なっくなー』

 

 



「・・・ん〜」



子供の笑い声と共に聞こえてきた歌に、正一は昼寝していた布団から体を起こした。

一昨日から神谷が休暇なので正一は八木家に預けられていた。

慣れない風景に二三度目をしばたたせると自分が八木家にいることを思い出し、キョロキョロとあたりを見渡した。



「・・・?」



隣に寝ていた為三郎・勇之助の二人がいないことに気付く。



「「おしくらまんじゅーおっされて なっくなー」」



再び聞こえてきた歌声のする庭先に視線を向ける。



(なんで兄ちゃんがおんの?)




子供と変わらない無邪気な笑顔で中心には神谷がいた。



「あ、正坊起きた?一緒に遊ぼ」


気付いた神谷が手招きする。

「・・・まだ眠いし」

返すと子供たちが声をあげた。

「え〜っ。まあ坊も遊ぼうやー」

「ん〜」

笑顔で自分を呼ぶ神谷になんとなく視線を合わせられずに俯く。

しばらくしていると、焦れた子供たちが神谷を急かしてまた遊び始めてしまった。

機を逸してしまった正一は布団の上にしゃがみ込みぼんやりとその様子を眺める。

肌寒い中、身体を寄せ合い遊ぶ子供たちは頬もほんのり上気して暖かそうだ。

縁側から吹き込む風に正一の体が震えた。

 


「遊ばへんの?」

背後からの声に首だけ動かして背後を見ると里が上着を着せてくれた。

「やって・・」

なんだか気恥ずかしいのだ。

神谷の休みの時には遊んでもらいたいと思っているのだけれど、いつも自分は外に出されてしまう。

何度か続くうちに、もう口にすることができなくなっていた。

だって、それってつまりは・・。



(いらん子なんやろ?)



そう思うと悲しくて俯いた。

「神谷はんなあ。毎日お忙しいてね。お休みの時は寝てばかしやの」

「ふーん」

気のない返事に気も止めずに里が続ける。

「せやけど正坊と一緒に遊びたいんやて」

いつもは止めるんだけど、今日は聞いてくれなかったのだ。

里がそう正一に告げた。


「・・・ほんまに?」


里が微笑む。


「えぇのん?」


大きく里が頷くのを見て勢い良く立ち上がるとパタパタと縁側に走り寄り庭先に飛び下りた。



休みの度に家を出されていて、寂しくないというのは嘘がある。

本当は、以前のように神谷にも遊んでもらいたいのだ。




「正坊?」

正一に勢い良く抱き付かれて、驚いた神谷の声が頭上から聞こえる。

顔を上げるとにっこりと微笑み頭を撫でてくれた。

「ずるい〜」

まわりから声が上がる。

皆が二人に抱き付いた。

神谷の身体が子供たちの勢いに耐え切れず、正一共々傾いで地面に倒れ込む。

葉っぱまみれになったのがおかしくて、みんなで顔を見合わせて大笑い。


「一緒に遊ぼ」


「うん!」


大きく頷いた正一に、神谷は笑いながら、今度は少し乱暴に頭を撫でる。

くすぐったくて嬉しくて、正一はもう一度神谷に抱き付いた。

 

 

セイちゃんの月に3日間のお休み。
正坊視点で進めてみました。
ホントは一緒に居たいんじゃないかなと。
だって正坊にとってセイちゃんは「いっとうかっこえかった」お兄ちゃんなのですから^^
セイちゃんも、「いいのにー」と言っていましたよね。
こんな裏話もあって良いのではないかと思いました。

2006.02.15 空子

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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