影遊び

 

「もう夏も終わりですねぇ」

副長の使いで黒谷へ行った帰り道、

日が幾分か傾いて赤く染まりつつある空を見上げて沖田が言った。

「そうですね。影もこんなに長い」

セイは背後にできた長い影を見ながら言った。

「昔、この影がこわくて兄上に泣き付いてました」

セイは懐かしそうに目を細めた。

「そうなんですか?」

沖田は楽しそうにセイを見る。

「だって、真っ黒で大きいし、いつまでも追いかけてくるじゃないですか」

昔のセイが思い浮かぶようで沖田は小さく吹き出した。

「なんですかぁ」

沖田の様子に少し口を尖らせてセイが応えた。

「ふっふっふ、良いことを教えてあげましょう」

沖田は得意気にセイに話かけた。

「こうするんですよ」

沖田は突然ピョンと跳ねた。

「?」

「ほーら、影が離れるでしょう?」

言われて、一緒に跳ねる。

「あはは。ホントだ」

「でしょう?」

セイは楽しそうにピョンピョン跳ねた。

「あ・・・」

「どうしました?」

突然おとなしくなってしまったセイに沖田が首をかしげた。

「い、いえ。何でもないです。早く帰りましょうっ」

セイはせかすように沖田の背を押した。

「おかしな人ですねぇ」

背を押されて沖田は道を屯所の方向へと向き直り歩き出した。

セイは隣に並び、こっそりと後方へと視線を向け手を延ばした。

 

重なる影は、沖田とセイが手をつないでいるように見えた。

偶然の発見に、嬉しくなってセイは微笑んだ。

 

昔、影から離れようとして、友達とピョンピョン跳んでました。
幼さ故の行動でしょうか・・・。
でも、大人からすれば突拍子もない、そういう発想ができる子供ってスゴイなって思います^^

2003.09.01 空子

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