かくれんぼ



一番隊は朝の隊務だったので、お昼を過ぎてからは個々の時間だった。

セイは久しぶりに近所の子供たちとの時間を楽しんでいた。

「あ、沖田先生。用事はもう済まされたのですか?」

屯所の方から沖田がやってきたのが見えて子供たちとみんなでかけよった。

「ええ。神谷さんがこちらだと聞いたので、

私も久しぶりに遊んでもらおうかなと♪」

「ちょうど隠れんぼするとこやってん」

「鬼は勇坊に決まったんです。沖田先生も隠れてくださいねー☆」

勇坊が寺の壁に手をつき顔をつけて数を数えはじめた。

「きゃーっ」

みんなちらばらに逃げていく。

セイも、どうにか体が隠れるところを見つけて息を潜めた。

ざっ

「お、おきたせんせー??」

思わず大声を出しそうになったセイは沖田の手のひらに口をふさがれた。

「しーっ。他に見つからなかったんです。いれてください〜」

 

「もーいーかい」

「もーいーよ」

 

声が聞こえて追い出すわけにもいかず、セイは壁へと身を寄せた。

「あ、にぃちゃんめーっけw

一人、また一人と見つかっていく。

ここは、ちょうど死角らしくて、鬼がこちらへ来る気配はない。

 

ドキドキドキドキ

 

(早く見つけてよ〜っ)

お互いの呼吸が感じられるほどに近くにいるので、

着物越しに触れた腕が熱い。

緊張してしまって息苦しい。

いっそのこと自分から出ていきたい気がする。

「神谷さん、勇坊がこっちにきますー」

「?!」

セイはグイと押されてますます密着。

自分の鼓動が大きくなるのを感じた。

ちらりと沖田を見上げると、

木の枝の隙間から見える子供たちに夢中のようだった。

(緊張しているのは私だけ・・・だよねぇ)

一応女なんだけどな。

はぁ〜と大きく肩を落とした。

「神谷さん?」

ボウッとしてたのか、沖田が顔の前で手をひらひらさせている。

「熱じゃないですよね?顔赤いですよ?」

額に手のひらを当てられた。

「い、いえっ。なんでもないんですっ」

「あ〜っ、沖田はん、神谷はんめ〜っけw」

勇坊が嬉しそうに二人にかけよった。

「もう、神谷さんが大声だすから〜」

沖田は心底くやしそう。

(野暮天っっ!!)

セイは心の中で毒づいた。

「そろそろ帰ろっか」

辺りが暗くなってきたので、

セイはまだ遊び足りない子供たちをなだめて

帰路へと促した。

ちらりと今まで遊んでいた壬生寺を振り返った。

『かくれんぼ』

(私の気持ちみたい)

どきどきしながら隠れてて

見つけて欲しくないのに、その逆の思いもあって・・・。

「神谷さーん、置いていきますよー」

勇坊を肩車をした沖田がセイを呼んだ。

「はーい、今いきますー」

フルフルと頭を振って、みんなが待つ所まで小走りに駆けた。

 

かくれんぼ
一人で隠れているのにこわくなって
早く見つけてくれないかなぁと思っていたりしました。
それが、ちょっと恋心と似てるかなぁとか思ったり・・・。

2003.07.10 空子

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