カワイイヒト

セイは肩をいからせて町をズンズンと歩いていた。

沖田と喧嘩をした。

きっかけは些細なことなれど、お互いが以外に意地っ張りで

いたたまれなくなってセイは屯所を飛び出したのだった。

最初はあてもなく町を歩いていたが、

セイは、ふと思い立ったように来た道を引き返した。

向かう先は、偶然見つけた一人になるにはちょうど良さそうな場所。

 

「神谷じゃねぇか」

ちょうど川べりの土手を下ろうとしたときだった。

セイの向かう目的の場所から聞き慣れた声がした。

「な、永倉先生??どうされたんですか?」

「見れば分かるだろう?日向ぼっこだよ」

永倉は大きな木の木陰で寝転がっていた。

セイは木に背を預けて隣にストンと腰を下ろす。

「・・・で?」

「はい?」

「その仏頂面はどうした?」

「・・・・」

まさか、上司に向かって『邪魔』とは言えない。

(一人になりたいのにな・・・)

「総司と喧嘩でもしたのか?」

図星を指されてセイはぶすっと唇をとがらせる。

「まあ、いいけどよ。ほら」

永倉は包みをセイに放り投げた。

開いてみると、甘い香り。

「あ、ありがとうございますv」

甘い物大好きなセイなので、

口に含めば先ほどまでの怒りはどこへやら、ついつい顔が緩む。

「これ、おいしいですね。どちらのですか?」

「馴染みの妓にな」

だから、知らんと永倉は座り直した。

「沖田先生も好きそう・・・」

口に出してからハッと口を結ぶ。

永倉は溜め息をついて、セイの伸ばして座った足へと体を倒した。

「な、なんですかー?」

「菓子代」

言われてセイはおとなしくなる。

「・・・永倉先生?」

声をかけると穏やかな寝息。

セイは動くわけにもいかず、力を抜いて木にもたれなおした。

空を見上げれば、まだ日も高く木陰にいるのに汗も噴き出してくる。

暑い中に、たまに頬をなでる風が気持ちいい。

「私、そんなに頼りないのかな・・・・」

自分は女だけれど、足りない所は努力でカバーしているつもりでいる。

その辺の男には負けない自身も少しはある。

でも・・・・、

 

 

「神谷さんっっ!!」

声がした方を見ると、こちらにまっすぐに向かってくる沖田の姿。

セイは逃げようとしたが、足を枕に寝る永倉が枷となって立ち上がれない。

目の前まで来たとき、沖田は肩で大きく息をしながら、

今気づいたとばかりに寝転ぶ永倉に目をとめていた。

沖田の手は早い。

セイが止める間もなく永倉の襟首を両手でつかんで乱暴に起こした。

「永倉さん、何してるんですかねぇ」

普段とは違った低い声。

セイも聞いたことがない。

「んあ?総司か・・・」

言いながらセイの腰に抱きついた。

「「なっっ」」

驚いてわたわたしているセイを後目に

永倉はニヤリと微笑んだ。

「もうお前なんてイヤだとさ」

「・・・っ」

沖田はセイを見た。

セイはぐっと息を飲んで答えた。

「私のこと、信じて頼ってくださらない沖田先生なんて

もうガマンできませんっ」

ぷいっと横を向いた。

「何を言ってるんですかっ、それはあなたのことでしょう?」

「「もっと、頼って欲しいのにっ」」

あれ?と二人顔を合わせる。

(同じ事、思ってた・・・?)

二人とも顔が赤い。

「ったく、お前ら二人はどうしてそうなのかねぇ」

面倒くさいとでもいうように永倉は頭をガシガシとかいた。

「・・・・どさくさに紛れて何やってるんですか」

「焼かない焼かない」

再びセイの腰に手を回した永倉に、

沖田はセイをぐいと引っ張り懐に抱き込んだ。

「うるさいですー」

沖田は舌を出す。

セイはその様子を見てクスリと笑った。

「この場所は提供してやるよ」

永倉はあちぃなぁとつぶやきながら去っていった。

 

 

「あなたはどうしてそう無防備なんですか」

「なっ」

「・・・・心配しましたよ」

沖田がセイの頭を抱え込んで息を一つついた。

「・・・ごめんなさい」

「・・・もっと頼ってくださいね」

「・・・はい」

「永倉さんや原田さん、あと土方さんの前では絶対にダメですけどね」

「はい」

少し笑う。

「私といる時くらい、楽にしてくださいね」

「・・・・」

この人の役に立てるように、いつもがんばってきた。

でも、もう少し力を抜いても良いのかもしれない。

沖田はそれを望んでくれている。

「ごめんなさい」

沖田の背中に手をまわすとキュッと着物をにぎりこんだ。

「素直な神谷さん、ちょっと怖いですねぇ」

「そんなことっっ」

反論しようと顔を見上げたとき、沖田の顔が真っ赤だったので

(もしかして、照れ隠し?)

嬉しくて、セイはしばらくそのままでいた。

 

 

イクミさん、お待たせいたしました。
ヤキモチっていうか、ちょっとした喧嘩っていうか・・・^^;
こんな話になりました。
もらってやってくださいませ^^

さて、カワイイヒトはどっちなのでしょう・・・??

2003.09.04  空子

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