恋模様

「かーみーやーさん?」

沖田がセイの顔を様子を伺いながら覗きこんでくる。

「・・っ」

ボウッとしていたセイは突然のドアップに

思わず大きくあとずさった。

「ひど〜い」

一応急いでいたのだろうか、
 
沖田は泣くふりをしながらセイを追い越し
 
局長の部屋へと入っていった。
 

はぁ〜
 

沖田の背中を見送って大きく溜め息。

最近、沖田の姿がまともに見れなくてセイはとまどっている。

以前と変わらなく沖田のことは尊敬している。

(・・・でも、なんか前と違うんだよねー)
 
「あ・・」

立ち暗み。

危うく倒れかけたところを斉藤に支えられた。

「だいじょうぶか?・・足、どうした?」

足下を見ると、血が流れている。

「手当てを・・」

「だ、だいじょうぶですっ、失礼します!」
 
急いでかけていくセイを斉藤は呆然と見送った。

「あれ?斉藤さん、どうしたんですか?」

立ち尽くしている斉藤に沖田が声を掛けた。

「ああ、神谷がいてな。足を怪我してるようだったんだが・・」

「・・そういうことですかー。大丈夫です。私が見てきます」

思い当たることがあるのかポンッと手を叩きながら歩いていく
 
沖田の背中を斉藤は面白くないといった表情で見送った。

(神谷の面倒を見るのは、あんたの特権なのかよ)

けっ!な心境だ。

「・・飲みに行こう」
 
斉藤は沖田とは反対方向に歩き出した。

 


「それはね、おセイちゃん」


セイに明里がずいっと近寄る。

「う、うん?」

その迫力に座ったまま後ずさる。

ここは妾宅。

お馬対策の休暇中で、近ごろの心の変化を
 
慕っている明里に聞いてもらっているのだった。

「沖田センセに対する気持ちが、深くなったんよ」

「?」

セイには何がなんだかわからない。
 
 
 

「かみやさ〜ん」

玄関のほうからセイを呼ぶ沖田の声がする。
 
「お、沖田先生?」

今は会いたくない気がする・・。

「私がでてくるから、おセイちゃんはここにおったらええし」

心境を察してか明里がセイの肩に優しく手を置くと出ていった。


はあ〜。


またまた溜め息。

何も考えずにここでの三日間をすごしたい。
 
 
 
 

「か〜みやさ〜ん」

翌日、セイの気持ちをよそに沖田が昨日とは違う菓子をもってやってきた。

「沖田センセ・・、そんなにお暇なんですか?」

セイはあきれ顔で沖田を見やった。

「明里さんが、今回は特に具合が良くないとおっしゃっていたし、
 
近頃お話しする機会もありませんでしたし・・」

最後のほうはごにょごにょと小さくなった。
 
どうやら、避けてたのに気付いていたらしい。

セイはばつが悪そうに笑んだ。

「元気そうで良かった。あと二日、ゆっくり体を休めなさい」

「沖田先生っ!せっかくだし、お茶でもいかがですか?」

去ろうとする沖田をセイはひきとめた。

沖田は嬉しそうにうなずくと、セイの後ろをゆっくりとついていった。

「それにしてもホッとしましたよ。
 
私、また何か神谷さんに怒られるようなこと
 
してしまったのかなあとか、
 
心配で眠れなかったんですよねぇ」

(考えたり悩んだりが苦手な沖田先生なのに・・)

少しでも気にかけていてくれたのが嬉しくて自然に笑みがこぼれた。

「あ、笑った」

「え?」

沖田の顔を見上げた。

久し振りにまともに見れた彼の顔は、照れくさそうな表情だった。
 
「私を見るとき、土方さんみたいにココに皺が寄ってたんですよー」

セイの眉間をつっついた。

「な、なにするんですか〜っ!」

セイはポカポカと沖田をたたいた。

明里さんの言っていたことの意味、まだよくわからないけれど、
 
今はこうしと側で笑い合っていられれば良いと思った。


恋って、どんどんよくばりになったり、不思議ですよね・・・

2003.06.15 空子

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送