ふいに、怖く思う事がある。

その笑顔を見る度に
時折見せる真摯な眼差しを感じた際に
その柔らかな声を聞く度に
その温もりに触れる度に

もっと、もっとその存在を感じたくなる。

相手を愛しいと想う事は少しだけ苦しい。


心ひとつ あるがまま


「沖田センセーイ」

松本法眼から無理やり復帰をもぎとって屯所へと戻って来たセイが、パタパタと息を弾ませて沖田の元へと走ってくる。
「まだ完全に治ってはいないんですから…」諌めるけれど、聞き入れてはもらえない。

「嬉しいんですもん」

こうして体を動かすことができるということが、沖田の隣に立つことができるということが。
セイが心底嬉しそうに笑う。

「沖田先生?」

「いえ、なんでもありませんよ」
沖田はその様子にしばらく見とれてしまった自分に溜め息を吐いた。

ヒタッ

ふいに額にひやりとした感触。

「熱はないようですね」

ふむ。と手のひらに感じる熱を探ってセイが告げる。
顔が近い。
彼女の呼吸を肌が感じとる。

「か、神谷さんっ?」

「体調管理も隊務の一つですよ」

大きな溜め息を一つ吐いてセイは呆れ顔でそう告げた。
自身の心臓の音が聞こえてしまうのではないかと思う程の距離。
セイはそんな沖田の感情の動きには気付かずに、顔をしかめて小言を繰り返す。

…ぷっ

ふいにおかしくなって沖田が笑い出した。

「な、なんですか突然。驚いたじゃないですか」

心配そうな表情から怒り顔へ。
くるくるくるくる変わる様子が愛しくて仕方ない。

「いえ。なんでもないですよ」

封印して来たこの感情。
認めてしまえば、自分の中で何かが失われてしまうと思っていた。

(不思議ですね)

自分の中に灯った温かな火種は時に胸に痛く燃え盛るけれど、それすらも前へ進む活力に変えてくれる。

(ありがとう。神谷さん)

伸ばしたら良いのにと思う、綺麗に整えられてしまった頭に触れる。
薄い肩に触れる。
いつもと違う、少しだけ意思を持った動作。

「お、沖田先生?」

戸惑うセイに小さく微笑む。

「今日は魚が食べたい気分です」

「食欲あるなら大丈夫ですね」

明るく笑うセイ。
その笑顔を守っていきたいと思う沖田だった。


今日で5年を迎えました。自分でも驚きです!
はじめよりも少しだけ色っぽい方向へ進んだ二人の関係を楽しんでいただけると嬉しいです^^
2008.06.15空子

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