祭
今日は小荷駄方の手伝いで町へ出ていた。
外で待っていたセイは、
隣の店がきれいに小物を並べていたのでついつい見いってしまった。
(かわい〜)
目を引いたのは可愛らしい髪飾り。
こういうの、つけられたらなあ。
セイはホウとためいきをついた。
「何か良いものでもありましたか?」
沖田がセイの目線の先の髪飾りを見た。
「あ、いえ。あの、お里さんに似合いそうだなあって」
慌てて沖田がもつ荷物を取り上げると、早足でその場を離れた。
「かみや〜、今日は祭あるんだってよ。行かねぇか?」
手が空いたので庭の掃除をしていると、原田に声を掛けられた。
「お祭りですか?いいですね♪」
箒を手にセイは原田へと近寄った。
「だめですよ〜。神谷さんは、私と出かける約束してるんですから」
ね。と促されて、セイは条件反射で頷いていた。
「沖田先生、約束なんてしてましたっけ?」
のんびり歩きながらセイが聞いた。
「いいからいいから♪」
沖田の足取りは軽い。
着いた先は明里と正坊の住む家。
セイの妾宅だった。
「おセイちゃん、早よあがって〜」
中から明里がでてきて、セイをひっぱった。
明里の様子がいつも以上に明るくて、
セイは理由もわからないまま中に引っ張りあげられた。
後をついていくと、明里が奥へと続く襖を開いた。
「かわいー☆」
目に入ったのは、衣紋掛けに掛けられた可愛らしい桃色の浴衣。
「お里さん、でかけるの?」
「おセイちゃんが着るんよ♪」
「え?」
明里の手際はとてもよく、またたく間にセイはかわいらしい町娘になった。
「沖田はんがおセイちゃんにて選びはったんえ」
鏡をセイの前に出しながら言った。
(沖田先生が・・?)
「外で待ってはるし、早よ行きなさい♪」
「ありがとう、お里さんっ」
久し振りに着る女性の着物に歩きにくいやら照れくさいやら。
「・・・なんとか言ってください」
自分を見て惚けている沖田に居心地の悪さを感じる。
「ホラ、あれですね・・馬子にも衣装?」
ボカッ!
グーで沖田を殴りつけて、
少し落ち着いたセイは明里が用意してくれた履物をはき沖田に並んだ。
「神谷さん、これもどうぞ」
「これ・・」
差し出された手の中には先日見掛けた髪飾り。
不慣れな手つきで飾ってもらい、セイは嬉しくて恥ずかしくて目を伏せた。
「ありがとうございます」
「行きましょうか♪」
「はい♪」
家からさほど遠くはないところで祭りは開かれていて、
老若男女でごったがえしていた。
人込みに飲まれそうになる。
「神谷さん」
「スミマセン」
手を取られて、ドキリとした。
まわりからは、自分達はどう見えているのだろう?
(普通の男女に見えてるのかな・・?)
好きな相手と歩くこと、密かに思い描いていた情景。
こういう機会は二度とはないかもしれない。
(大切にしよう)
セイはつないだ手に少しだけ力を込めた。
ひとしきり楽しんで、少し落ち着いた時だった。
セイは突然肩を引き寄せられた。
「センセ・・?」
動揺して見上げると、
「原田さんたちです」
小声でささやかれる。
いつもの三人で楽しそうに歩いている。
ふたりで見つからないように小走りでその場を後にした。
祭りの場から少し離れたところまで走って、
見つかっていないことを確認し二人は顔を見合わせ同時に吹き出した。
「なんだか隠れん坊みたいですねえ」
「あはは、そうですねー」
もう一度笑った。
「沖田先生、ありがとうございました」
深々と頭を下げた。
「たまには、ね。余計なコトするなって殴られたらどうしようかと思いました」
沖田は満足げに頷いた。
「さて、いきましょうか、おセイさん♪」
「はい♪」
手をつなぎ、カラコロなる下駄の音を楽しみながら帰路へとついた。
夏祭りの季節ですよねv
たまにはいいんじゃないかなと^^
2007.07.14 空子
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