夏の思い出
「祭りだ、祭りー♪」
非番の隊士たちがどこからか祭りの情報を聞き付けて大騒ぎをしているのを涼しい目で土方は見ていた。
「・・・騒がしいな」
眉間に皺を寄せて土方が呟いた。
「今日は土方さんも大好きなお祭りですよー」
土方の部屋でお菓子を頬張る沖田が口を開く。
「えー、意外。ぁ・・」
ギロリとにらまれて沖田の隣に座しているセイはしまったとばかりに両手で口を押さえた。
「今日は大きな花火が上がるそうですよ♪見に行きませんか?」
沖田がセイに言う。
「え?」
「ホラ、明里さんからいただいた浴衣。今日なら人も多いですし、しばし女子に戻られたらどうです?」
小声で囁かれてセイの顔が明るくなった。
「え?良いんですか??」
「せっかく頂いたのにもったいないじゃありませんか」
(・・・所詮そんなところですよね)
見当外れな返事にセイは肩を落とす。
(でも嬉しい☆)
「はい♪」
ニッコリと微笑み合う。
そんな時だった。
「神谷はこちらですかっ?」
近藤の遣いで出ていた山南の共をしていた隊士が裏庭へと駆けてきた。
「どうされたんです?」
「山南総長がっ!」
「山南さんが、どうされました?」
沖田の落ち着いた声音に少し落ち着いたのか隊士が口を開いた。
「もともと体調はあまり優れずと神谷に聞いていたので気をつけてはいたのですが、この暑さの中でしたので・・・」
屯所に戻った途端にぐったりとしてしまったらしい。
セイが立ち上がると沖田を振り返った。
「すみません沖田先生。お祭楽しんできてくださいね」
立ち上がるとその隊士と共に部屋へと急いだ。
慌ただしく床の用意をした後、人数がいては逆に休めないだろうということで、セイは一人部屋に残り顔色の優れない山南を看ていた。
(今朝、出かけるのを止めてたら良かった・・・)
それか小姓の自分が共をしていれば良かったと後悔する。
「・・・神谷君?」
「いけません。山南先生」
起き上がろうとする山南を制する。
「いや。もう大丈夫だよ。それより・・・・」
続きを聞こうと首を傾げるセイに山南が申し訳なさそうに口を開いた。
「・・・今日は祭りだろう?出かけないのかい?」
「いえ、良いんです。人がいなくて掃除もはかどりますし」
ニッコリと笑うセイに山南が首を項垂れた。
今日セイを共に連れなかったのは、たまには沖田と外で遊びにでも出るのも良いのではないかという配慮からだった。
それなのになんと間の悪いことか・・・・・。
頭を抱えてしまう。
「山南先生。お腹空きませんか?」
思いついた用に手を叩くセイに、反応するようにお腹が鳴った。
そう言えば朝から何も口にしていないことに気がつく。
「お粥でも用意してきますね」
「ありがとう」
ゴロリと横になりパタパタと出ていくセイを見送ると、
急に静かになった部屋に祭のお囃子の音が聞こえてきた。
体を起こし、縁側に出るとしばらく聞き入る。
「お祭り、近いようですね」
お膳を持ちセイがやってきた。
「あぁ、そうだね。・・・何だい?」
「顔色、良くなりましたね」
セイが隣に腰を下ろす。
「はは。食欲もこの通りだよ」
渡されたお椀はもう空で。
「安心しました」
「どうも夏は苦手のようだ」
肩をすくめる山南にセイは安堵の息をつく。
しばらく外から聞こえる音を聞いていると、突然ドーンと地から響く音。
山南とセイは顔を見合わせた。
更にもう一度。
続いて廊下を走るバタバタという音。
「おーい、花火始まったよーっ」
藤堂が駆けてくる。
「山南さん、もう大丈夫なの?」
「あぁ、横になったからね」
「歩ける?」
「ん?大丈夫だが・・・」
「無理はいけませんよ」
セイがよろめいた山南を支えた。
「・・・ありがとう。で、何かあったのかい?」
「あ、うん。みんなが呼んでこいって」
藤堂が指をさした方向を見ると、近藤が屋根に足をかけている所だった。
「ん?・・・あーっっ」
目を凝らすと、土方や原田・永倉も屋根に登っていた。
「まったくあの人たち何やってっ!!」
(局長・副長まで〜??)
「あそこから花火がよく見えるんだって。行こうよ」
ぐいっと二人の腕をひっぱった。
「ちょっ、藤堂せんせ〜。山南先生も笑ってないで何とか言ってください」
「はは、まあたまには良いじゃないか」
藤堂にぐいぐいと腕を引かれながら山南が笑う。
足下がおぼつかないので山南は縁側で花火を見上げる。
屋根の上ではお酒も入り小さな宴会場と化していた。
セイもしばらく山南の隣に座していたけれど、原田に呼ばれて藤堂と交代して渋々屋根に上がった。
「あれー、神谷さんも来ていたんですか」
突然の背後からの声に驚いてふり向く。
「沖田先生?お祭は??」
「みなさんに捕まってしまいまして」
セイの隣に腰をおろすと、持ってきたお菓子をセイに握らせた。
「な〜に言ってやがんだよ。神谷と一緒に行けなくて拗ねてたの誰だよ?」
原田が沖田から酒瓶を奪った。
「沖田先生?」
「え?あ、ホラ、花火綺麗ですねぇ」
後ろからセイの頬をがっしりと両手で挟むと花火が上がる方へと顔を向けさせる。
「沖田先生!!」
向き直ろうとするけれど、沖田は力を緩めない。
「痛っ」
「あ、すみません」
セイが叫ぶと沖田の手が少し緩んだのでその隙に沖田を見る。
「あ・・・・・・」
間近で目が合う。
その表情は暗闇でも見てとれて・・・・。
「・・・・・」
しばらくお互い目をそらせずにいた。
「おぉぉぉ〜。たまんねぇなぁ」
すっかり出来上がった隊士達の歓声が上がる。
その声に我に返り視線を逸らす。
「あ、あの、花火綺麗ですね」
(何言ってるの私〜)
「そうですねぇ」
チラリと沖田を盗み見るともう花火に釘付けで。
(良かった。隣で見ることができて)
セイは小さく微笑むと沖田の隣で花火を見上げたのだった。
花火 夏の風物詩ですよね(*^∇^*)
手持ちでみんなでする花火も好きです^^
綺麗で、どことなく切なくて好きです。
今年は何だか忙しくて浴衣も着ていません(゜дÅ)ホロリ
2005.08.28 空子
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