虹
「にいちゃーん、うちにもやらしてー」
八木家の子供と近所の子供達が
母親のいいつけで庭の草木に水をやっている様子をセイは楽しそうに眺めていた。
本格的に夏が訪れた京の都は暑い。
子供たちはここぞとばかりに水をかけあいっこしている。
「神谷はんも混ざらん〜?」
「私はいいよー」
混ざりたい気持ちもあったけれど着物が濡れたりしたら大変。
女だということが知られるような事は極力避けて通らなければならない。
なんでなんでと詰め寄る子供達にセイは困ってしまう。
「神谷さんは体調が優れないんですよー。私をまぜてください♪」
いつのまにかやってきた沖田がセイの背後から声を掛けた。
「ええよー」
言いながらパシャリと水をかける。
驚いている沖田の表情に満足したのか、
キャッキャと笑いながら子供たちが駆け回る。
「暑いな・・・」
沖田と子供達が時間も忘れて遊ぶ中
縁側のひさしから日当たりへと顔を出して目を細める。
八木の奥方から進められた笠は
邪魔なのかセイが座る横に積み上げられている。
「わあー、みてみてや神谷は〜ん♪」
沖田と子供たちが水を掛け合っているところへ小さな虹がかかる。
セイは昔聞いた話を思い出した。
『虹の元には、宝物があるのよ』
母の優しい声。
雨が上り虹が出たときに聞かせてくれた。
「きれいですねぇ」
いつのまに隣にいたのか沖田が声を掛ける。
「虹の元には宝物があるそうですよ。昔、母上に聞きました」
子供だましなことなのかもしれないけれど・・・。
「そうですかー。では、見てみますか♪」
「えぇ?そんな、あるわけないじゃないですか」
溜め息をついて、はしゃぐ沖田を見送った。
「神谷さーん、来てご覧なさいよー」
「え?まさか、ほんとに何かあったんですか??」
皆が楽しそうに一点を見つめている。
(え?なになになに〜??)
皆がしゃがみ込むそこへとセイは急いだ。
「ほらほら♪」
見ると緑の草の中に、鮮やかな可愛らしい白い花が一輪だけ咲いている。
「キレイ・・」
緑の中に咲く花に特別な物を見つけられた気がしてセイは嬉しくなった。
「ありましたね、宝物♪」
「はい♪」
しばらく皆でその場に座り込み、その小さな花を眺めていた。
ホースで水やりをすると、虹が出来て嬉しかったりしますよね♪
手で水をやって虹ができるのかは疑問ですが、
できると良いなぁと思ったのと、
寒い日が続きますので、正反対の夏のお話描いちゃいました^^;
2004.03.04 空子
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