温もり

 

「ックシュン」

肌寒さに身を竦ませてセイは一つくしゃみをした。

「風邪か?」

周りにいた隊士が声をかけてくれる。

「いえ、大丈夫です」

「はやってるみたいだから気をつけろよ」

「はい。ありがとうございます

そういえば、季節の変わり目だからか隊の中で風邪がはやっている。

敷地内に何十人も暮らしているのだから移り広がるのも早い。

「昼から非番だろ?しっかり休んでおけよ」

「はい」

セイは一礼して部屋へと向かった。

 

 

 

(のどかだなあ)

 

縁側の柱に背を預けて空を仰いだ。

秋晴れで気温も穏やかだからか、

非番の隊士は出払っていて静かな午後だった。

特に用事もないし、近ごろ忙しかったので体を休めることにしようと思い今に至っている。

プラプラと足を揺らして辺りを見回す

(あの花咲いたんだ)

セイは庭先の花に目を止めた。

(あんなとこに、下駄・・)

見ると片方だけひっくり返って落ちている。

朝方だれかが探していたような気がする・・。

セイは庭へと降りて下駄を拾い揚げてを残ったほうと合わせて目立つように置いた。

ふだん忙しくて見落としていたささいな日常の変化。

とても大切なことに思えてセイは微笑んだ。

 

 

 

「ん〜・・・」

息苦しさにセイは目を覚ました。

(あれ?)

体の自由がきかなくて慌てる。

「目覚めましたか?」

もぞもぞと体を必死に動かすセイの上からくすくすと笑いを含んだ沖田の声。

勢いをつけて跳ね起きる。

 

 

ばさばさばさ

 

 

目の前には着物やら蒲団やらのたくさんの布の束。

「なっ、なんですかコレっ?」

頭は一気に覚醒。

自分が寝ている間に、どんどん被せられたらしい。

「いたずらにもほどがありますよ!片付け大変じゃないですかっ!」

ぶつぶつ言いながら着物を集め始めた。

「神谷さんが風邪だという噂がありましてね」

「?」

セイは首をかしげた。

「たまにくしゃみをしながら眠る神谷さんに、

風邪をひかせまいと皆さんが我先にとかけていたんですよー」

一緒になって着物やらを拾い揚げながら沖田が言った。

「そ、そういうことだったんですか・・・」

セイは胸の辺りが温かくなるのを感じて集めていた布の束を抱き締めた。

「暖かかったでしょう?」

「はい♪」

セイは笑顔で沖田に向き直った。

隊士達の温かな人柄に心穏やかになるセイだった。

 

10000hitありがとうございますっ!!
開いてビックリしましたvv
その後、初のお話upです^^

2003.11.03 空子

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