想い

 

あなたの夢を見た・・・。

暖かな腕の中、優しい声音で楽しそうに物語を語ってくれている。

一番幸せを感じられる時。

 

「山南はん・・」

自分の発した言葉で目が覚めた。

辺りを見回すが、彼のぬくもりも、優しい言葉も今はない。

「・・・っ」

ぱたぱた

涙がにぎりしめた手に落ちる。

隣で眠る正一を起こさないように庭に降りた。

瞳を閉じれば愛しいあの人の笑顔。

想うほど悲しくなって明里は両腕で自身を抱き締めた。

 

「里ねえちゃん、水まき終わったで」

正一が元気に庭先にかけてきた。

「正坊はええ子やねぇ。したら、遊びにいってもええよ」

明里は掃除のためにかぶっていた手ぬぐいを外しながら言った。

「ん〜。眠たい〜」

暖かな日差しが入るその部屋で目をこすりながらころんと可愛らしく寝転んだ。

明里も一緒に隣に横になる。

暖かくて、気持ち良い。

「あんな、姉ちゃん」

「ん?」

「あったかくってな、山南のおいちゃんにだっこされとるみたい」

正一から出た名前にドキリとする。

「・・そうやね」

暖かく包み込んでくれるかけがえのない存在。

眠ってしまった正一を起こさないようにそっと起き上がり、

今まで開けることはなかった、形見にと受けた山南の行李を出し、

中から山南の着物を取り出した。

(山南はん・・)

羽織ってみると、抱き締められる感覚。

少し嬉しくなって、正一と自分掛けて横になった。

 

「お里さ〜ん、愛しの清三郎が遊びにきましたよ〜・・あれ?」

庭先から驚かそうとやってきたセイは明里がいないので辺りを見回した。

「あ・・」

(あれは確か・・)

縁側から上がろうとした時、

二人が山南の着物を掛け布団代わりに寝入っているのを見つけ少し胸が痛んだ。

明里の頬には涙の後があるが、表情は穏やかだ。

山南の夢でも見てるのかもしれない。

上がって着物を掛け直してやり、そっと外へ出た。



「お待たせしました」

外で待っていた沖田に駆け寄る。

「あれ?お里さんへの差し入れではなかったのですか?」

沖田がセイの荷物を指さした。

「いえ、いいんです」

胸が痛くなって涙が出てきた。

「ど、どうしたんですか神谷さんっ?!」

うまく声にならなくて胸を押さえた。

なぜだかわからないけれど、涙は止まらない。

沖田は何をするでもなく、ただ黙ってセイの隣にいた。

 

「・・・・」

目を覚ましたとき、いつも夢だったんだと哀しくて泣いていた。

でも、なぜだろう?

今日は、心の中が温かい。

とても温かくて、優しくて・・・・。

忘れかけていたぬくもりを思い出した。

目に入ったのは山南の着物

愛しくて抱きしめた。

「里姉ちゃん??」

起きた正一が明里の袖を引っ張った。

「ごはんの支度しようね」

「手伝うー♪」

微笑み合って、幸せな気分で立ち上がった。

 

大事な人を亡くした明里さん
正坊がいてくれて良かったなぁと思います。
幸せになって欲しいなと思います(゜дÅ)ホロリ

2003.07.03 空子

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