鬼の錯乱


天気も良く、清々しい朝だった。

「・・・っくしょいっ」 

 局長近藤勇と朝食をとっていた土方歳三は、

突然の悪寒に身を震

わせた。

「どうした、トシ?」

  大きな顎で小魚をパリパリと砕きながら

心配そうに土方の顔を覗き込む。

「急に寒気が・・・っ」

両手で熱い茶の入った湯のみを抱えた。

「・・・土方君、そこにいるんだね・・・」

「っうぁっちぃ〜っ!!」

  突然の伊東参謀の声に、

思わず湯のみをひっくり返してしまい、

着ていた着物を胸の辺りから濡らす。

「大丈夫かいっ土方君!火傷になったら大変だっ。

早く着物を脱いだが良い」

スパンッと障子を勢い良く開き、

喜々とした瞳で土方に詰め寄った。

なんだか手つきがあやしい・・・。

「なっっ!」

  突然の伊東の来訪に土方は目を白黒させている。

「ささ、遠慮などせずに♪」

「いっ、いい!近寄るなっ、うわぁぁぁぁっ勇さぁぁぁんっっ」

襟を必死に合わせて半ば押し倒されるような形の土方は

必死で近藤に救いを求めるが、

近藤はというと、場の急展開に対応できず、

呆然と事の次第を見守っている。

「そ、そそ総司っ!かみや〜っ!」

  屯所内に悲鳴が響き渡る。

「どうしたんですか土方さん?!」

「副長っ?!」

 総司がバンッと障子を開けた。

「・・・・・・」

中の様子に、しばらくの沈黙の後、

総司は何もみてないという感じで無言で障子を閉めた。

「中で何か…?」

セイの心配そうな声が土方の耳に届いた。

「なんでもありませんでしたよー。

神谷さん、一休みしたら甘味屋へでもいきましょー♪」

「はい☆」

  二人の足音が遠ざかる。

 

あんにゃろ〜っ

後で覚えてやがれ〜!!(怒)


  怒りと寒気で顔を赤くしたり青くしたり。

意識が飛びそうになった時だった。

ものすごい足音が響き渡る。

「副長、ごぶれい致しますっ」

  すぱぁぁんっと障子を開いたのは隊一力持ちの島田魁。

  土方をヒョイと肩に担ぎあげると颯爽と局長室を駆け出ていった。

  伊東から逃れることができた土方は、

ヘヘーンとばかりに

悔しそうに涙を流し袖を噛む伊東に舌をだした。

「・・・・・・」

  ハタと気付くとそこは平隊士部屋前の廊下。

「・・・ゴホン」

  島田は周りに気付いて肩にかついでいた土方を下ろす。

「・・・ごくろう」

  何ごともなかったかの様に去る土方。

「かわいすぎだぜ土方さんっ」

  平隊士たちはあんぐり口を開けたまま動けずにいたが、

用事でそこにいた原田が豪快に笑ったのをきっかけに皆が大爆笑。

 

ちっきしょ〜〜っ!!

 

土方はその日から二日間、

天の岩戸よろしく部屋から出なかったという。

 

風光るの土方さんなら、こんなのもアリな気がします・・・。
2003.06.15  空子

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