大人と子供

 

「少年から青年へと変わっていく様は見ていて嬉しいもんだなぁ」

近藤局長が嬉しそうにうんうんと頷いた。

「大人の色香を感じますなv」

伊藤が扇子で口元を押さえた。

「ぶっ」

茶を吹き出す土方。

ここ最近、セイに対してどう扱って良いやら考えあぐねている幹部たちだった。

 

 

「こう、なんていうか・・・なぁ?」

「なぁって言われても困るんだが・・・・」

文武館での恒例の稽古。

近頃ヒソヒソとそんな会話が隊士達の間でされていた。

視線の先には面を取り、汗を拭うセイの姿。

当の本人は、そんな会話に気づくはずもない。



 

「もう一本お願いしますっ!」

倒されても倒されても、セイは果敢に相手に挑んでいく。

楽しくて仕方がない様子だ。

可愛らしい容姿に似合わずセイは強い。

気を抜くと一本をとられるどころか吹き飛ばされてしまう。

気が抜けない。

 


バタンッ!!

 

セイが床に倒れ込んだ。

「わるい。加減を忘れたっ」

相手をしていた隊士が走り寄った。

「いえ、加減など無用ですっ!」

セイが竹刀を持って立ち上がろうとしたときだった。

 


コトリ

 

竹刀が持ち上がらない。

「・・・・・」

セイは左手に竹刀を持ち直して立ち上がった。

「大丈夫か?」

「何でもありません」

会話を聞いた隊士達がセイに寄ってきた。

心配そうな隊士たちにセイは何でもないと稽古を促していた。

それでもみんなセイが気になるのか場を離れない。

「そこ、何をしているんですか。稽古を続けなさいっ!」

沖田の怒号が響く。

沖田の稽古は厳しいと評判で、セイのことは気になったけれど

皆それぞれ場を離れて稽古は続行された。

 

 

稽古を終えて、セイが道場を出ようとしたときだった。

「神谷さん、ちょっとこちらへ」

礼が済むと、沖田がセイを呼んだ。

「・・・なんでしょう?」

セイは無意識に右腕を後ろに回した。

「見せてみなさい」

ぐいと右腕をひっぱり袖を上げた。

「い〜っっ!!」

セイの顔がゆがむ。

周りの隊士達はそんな二人のやりとりに釘付けだ。

「骨折ですね。しばらくおとなしくしていなさい」

「・・・・」

セイはガックリと肩を落とした。

「あはは、大丈夫ですよ。子供の骨はすぐくっつきますv」

うなだれたセイの頭をポフポフとたたいた。

「はい。仰せの通りにいたします」

セイは頭を下げた。

 


(神谷を子供扱いできるのはあんただけだっっ)

 

二人のやりとりをみて

隊士達は心の中で叫んでいた。

 

 

女性の変化にうとい男がここに一人・・・・。

18歳になったセイちゃん。
もうそろそろ性別を偽るには厳しい年齢に来ているんじゃないかなと思います。
隊士達はセイちゃんが女性だとは気づかないまでも、
本能的に「守りたい」と思うところとかあるんじゃないかなとか。
そんな中、いつも一緒にいるのにそういうところに気づかない男、沖田がいたり・・・。
そんな総ちゃんでいてほしいなぁと思う私でした。
2003.11.30 空子

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