桜の記憶

 

昔からのことだった。

桜を見ると涙が出る。

なんでだろう・・・?

考えるけど、わからない。

ただただ、涙が頬を伝うのみ・・・。

 

 

最近、よく夢を見る。

なぜか自分が新選組の隊士として中にいる。

そして、必ずでてくる一人の男の背中。

夢の中の自分は、どうもその男のことが好きらしい。

いつも視線が彼を追っているからわかる。

目が覚めても、その感覚をひきずっている。

セイは切なくて胸を押さえた。

でも、女が中にいるなんて教科書にもないし、聞いたこともない。

(変なの)

セイは布団から起きあがってノビをした。

そう言えば、特番で新選組のドラマやってたから、その影響かな・・・?

セイは身支度を整えながら首をひねった。

「セイーっ。今日部活だろ。遅刻するぞー」

階下からは兄、祐馬の声。

「やっばっ」

適当に身支度を整えて、ダッシュで家を出た。

 

 

4月

今日は、春休み最後の部活動。

セイは剣道部に所属している。

昔から兄と一緒に稽古していたおかげで、

県内でも5本の指にはいる実力である。

最後ということで、部活も早めに切り上げられ、

みんなでお茶して帰ることになった。

「あーあ、2年になったら少しは普通の女の子らしい生活したいなぁ」

「うーん、でも部活三昧だしねぇ^^;」

女4人でいると、話題に上るのは、やっぱり男の子のこと。

みんな、気になる男の子がいるらしい。

セイは楽しそうに話を聞いていた。

「セイは、そういう話聞かないね」

「うーん、まだそういうのわかんないなぁ」

誰とも知らない夢の中の男のことが気になるなんて言えない。

恋とか気にはなるけれど、今は部活や友達と話することの方が楽しいし。

「お子チャマだなぁ♪」

みんながセイの頭をくしゃりとなでた。

「いいのっ」

セイは真っ赤になってハンバーガーを頬張った。

 

 

 

「セイちゃん、お帰り^^」

「里姉ちゃん♪」

家に帰ると、従姉妹の里乃が大きなおなかを抱えて遊びに来ていた。

荷物を放り投げ、制服の上着を脱いで駆け寄る。

「こら、セイ。埃が立つでしょう?里乃ちゃんは大事な体なんですからね」

台所から母がたしなめる。セイは肩をすくめて舌を出した。

大きなおなかを触らせてもらう。

とっても幸せそう。

旦那様は、里乃よりも年上の見た目通りにとっても優しい人。

いつ会っても二人幸せそうで、セイの理想の夫婦だったりする。

「ねえ、里姉ちゃん。私って、お子チャマ?」

「なぜ?」

「この年でね、好きな人いないのって、おかしい?」

「おかしくないわよ。私が敬助さんに会えたのは20歳すぎてからよ」

「理想は、里姉ちゃん夫婦☆」

「あら、嬉しい」

里乃は柔らかく微笑んだ。

「里乃ちゃん、旦那様のお迎えよー」

「はーい」

付き添って玄関へとお見送り。

「やぁ、セイちゃん」

優しい笑顔を向けられる。

敬助は、大事そうに里乃を支えた。

見ているだけで幸せになれる光景。

セイは母親と一緒に二人を見送った。

「セイちゃん」

玄関を出るところで里乃が振り向いた。

「幸せになるんよ」

「・・・え?」

里乃の声が小さくて聞き取れなかった。

里乃は微笑むのみ。

 

 

 

「!!」

朝方、セイは汗をかいて飛び起きた。

「ユメ・・・」

内容は覚えていないけれど、感覚だけが残ってる。

 

ポタポタ・・

 

布団に涙が落ちる。

(ホント、どうしちゃったのかな・・・)

ここ最近、この夢ばかりみる。

夢の中の私、あの男の人といて幸せじゃなかったのかな・・・?

・・・そんなことはなかった。

むしろ逆のように感じられる。

(じゃあ、なんで泣いてばかりいるんだろう・・・?)

ゴシゴシと頬をこすって、眠れそうになかったので散歩に出ることにした。

 

 

足が向いたのは、桜小路。

夢で感じた感覚は、いつもそこで感じているのと似ている。

セイは空を見上げた。

明るくなり始めた、まだ肌寒い春の空。

ひんやりした空気、嫌いじゃない。

新しい一日が始まるこの時間は昔から好きで、

こっそりと家を抜け出してはココに来ていた。

一本だけの見事な桜。

秘密の場所。

朝日を浴びて色鮮やかになる。

 


風が吹いた。

「わっ」

舞う桜の花弁に視界を遮られる。

目を開くと、桜の木の前に着物姿の見知らぬ男の背中。

桜を見上げているようだ。

なんだか懐かしい。

「オキタセンセイ・・」

知らず口を出た名前。相手は気付いたのか、ゆっくりとこちらを振り返った。

優しい笑顔。

思わず駆け寄った。

両手を広げてセイを待っていてくれている。

「おき・・?!」

延ばした手は虚空を掴むのみ。

涙があふれてきた。

 



『大好きですよ。おセイさん』

 



思い出した。

遥か遠い記憶。

いつも背中を追っていた。

大好きだった沖田先生。

優しい声も、温かい腕も、まなざしも、すべて覚えてる。

「センセ・・・っ」

セイは突然溢れてくる感情の波にあらがえず、その場に座り込んだ。

思い出しても、彼の人はここにはいない。

あの頃、あんなに望んでいた平和な世界がココにはあるのに・・・。

セイは桜を見上げた。

 


『花は桜木  人は武士』

 

 

自身の志に生きて、逝った彼の人。

桜を見上げる度に涙が止まらなかった理由がわかった気がした。


 


「どうかされましたか?」

背後から心配そうな声。

「い、いえ、なんでもありません」

涙を拭い、立上がって振り向くと一人の青年。

二人の周りを優しく桜が舞った。

 

 

「おきた、センセイ・・・?」

 

「・・・かみやさん?」

 

 

再び涙があふれてきた。

でも、哀しいからじゃない。

((やっと、会えた・・・))

 

ここから、新しい二人の物語は始まる。

 

 

はい、お待たせいたしました><
現代になってしまいました^^;
幕末バージョンも考えてはいたのですが・・・。
そちらも、機会があれば披露させていただきたいです^^


『輪廻転生』
セイちゃん達には、生まれ変わったら
絶対に幸せになって欲しいと思ってます。
明里さんと、山南先生も幸せになって欲しかったので
こんな形で出てもらいました。



こんなんですが、もらって下さい^^;

リクエスト、ありがとうございましたー(*^ ^*)

2003.07.25 空子

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