散歩
梅雨
屯所にいても暑いし、せっかくの晴れということで、セイは沖田と散歩に町に出た。
「だいぶ暑くなってきましたね」
汗を拭き拭きセイは言った。
「そうですねぇ。でも、ホラ、おいしいものがたくさん食べれますよ♪」
言いながらセイの手を引っ張って、
歩き売りをしている果物屋を目指して走った。
「夏もおいしいものたくさんあって良いですよねぇ♪」
「・・この時期に、これだけ食欲のある先生が私には不思議です」
セイは口許を押さえた。
木陰に座り込んで調達してきた西瓜やらを沖田はおいしそうに口に運んでいる。
セイも始めのうちは水分の補給もできるしおいしいしと
一緒になって口に運んでいたけど、
時期的に食欲もわかず、見ているだけで腹が膨れる状態だった。
「仕方ないなあ。では、神谷さんにはこちらを」
はいっと口を開けるように促されて開くと金平糖を入れられた。
「おいしい」
「でしょう?」
沖田はふふとほほ笑んだ。
「さて、ゆっくりしたし歩きましょうか」
「はい」
少し風が出てきて気持ちも良い。
「動かないとお肉のかたまりになっちゃいますからね〜」
沖田がのんひり歩きだす。
「それは言わないでください(>_<)」
セイも続いて歩き出した。
巡察時のピリピリした中で通るときと違い、
同じ道なのに今はとても新鮮に感じる。
母親に手を引かれている子や、遊びに夢中な子供たち。
他愛ない日常が愛しい。
初めて歩く場所のように辺りを見ながら歩いてしまう。
「きゃっ」
よそ見していたからか小石に躓いて体が前のめりに傾いだ。
「神谷さんっ」
沖田がとっさに手を出してくれたおかげで難を逃れた。
「も、もうしわけありませんっ」
沖田の腕につかまって体制を整える。
「・・沖田先生?」
助けたままの姿勢で固まっている沖田に声を掛ける。
目の前でひらひら手を振ると、気付いた沖田が顔を真っ赤にした。
「どうなさったんです?」
セイは首を傾げた。
「・・あたったんです」
ポソリと沖田が言う。
「何が?」
「・・その、胸、が」
恥ずかしそうに沖田が言った。
「え〜〜っ!」
セイは真っ赤になって胸の合わせを握り締めた。
今日は暑かったので、さらしも緩くしてあったのだ。
「いや、あの、ホラ、不可抗力ですよね?ねー?」
バッチ〜ンッ!
「知りませんっ」
セイは真っ赤な顔で沖田を残し早足で歩いた。
後ろからは沖田の声。
戸惑っているのが感じられる。
セイは速度を落とし、
沖田にわからないように笑って
追いかけてきてくれるのを待っていた。
あんなにくっつき度が高いのに、総司は外見面から
セイちゃんを女の子だって感じることはないんでしょうか。
2003.07.08 空子
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