幸せ日和

 

(気持ち良い風・・)

 

セイは一人、野原に体を投げ出して寝転んでいた。

脇には木刀。

野原で一人、素振りをしていたのだ。

ここは偶然見つけた場所で何度か訪れているけれど、

今だに人を見たことがないので

神谷流の稽古をしたいときには調度良い場所と言えた。

静かに目を閉じて横たわっていると汗がひいていくのがわかる。

視線を空に向けると、空はとても青く澄んでいて穏やかな気持ちになる。

初夏の暖かな日差し。

風がおさまれば心地好い陽気だ。

あまりの心地好さに瞼が降りてしまう・・・。

 

 

 

「ほら、斉藤さん。こちらの方が近道なんですよー」

歩いていると突然沖田が道端の草をかき分けた。

「子供かあんたは・・・」

少し背の高い野草をかきわけて沖田が道なき道を行く。

斉藤はすこしばかり飽きれながらも沖田が作ってくれた道を進んだ。

「あれ?」

沖田が突然立ち止まる。

「どうした?」

開けた視界に安堵して斉藤が聞いた。

「見かけないと思ったら・・・」

「?」

沖田が向けた視線の先には草原に寝転ぶ少年の姿。

「・・・神谷、か?」

「そのようですねぇ」

二人で側に歩み寄る。

近付く自分達に気付く気配がないので、二人は心配になって顔を覗き込んだ。

セイは人の気配に気付かないほど熟睡している。

「・・・呑気な」

飽きれながらも可愛らしい寝顔に『どっきゅん』だった。

「お、おい。沖田さんっ」

沖田が突然座り込んだので何をするかと思えば、

セイの柔らかそうな頬をつつき始める。

「あははー。起きませんねぇ。こんな機会ないですよー」

促されるが、ちょっと戸惑う。

そろりと手を延ばした時だった。

 

「う゛〜」

 

眉を寄せて不機嫌そうな声。

斉藤はビクリと手を止め、沖田と顔を見合わせた。

 

(やばいっ)

反撃が怖すぎる。

 

コクリと喉を鳴らし、状況を見守った。

 

 

ゴロン

 

 

二人の緊張をよそに、

また穏やかな息をたて始めたセイに

二人は顔を見合わせ小さく吹き出した。

「戻るの少しくらい遅くなっても良いですよね♪」

言いながら沖田はセイの隣に寝転んだ。

「・・・・」

一つ溜息をついて

斉藤もセイをはさんで沖田と反対側に寝転んだ。

 

(平和だ・・・)

 

眠るセイをはさんで向こう側の沖田も同じ心境なのか、

穏やかな表情で空を仰いでいた。

夜には巡察が控えている斉藤は、

備えて気持ちを切り換えなければならなかったけれど、

あまりにも幸福に感じられるこの穏やかな空間を手放しがたく目を閉じた。

 

 

 

「ん〜」

セイは肌寒さを覚えてのそりと起き上がった。

(寝ちゃってたんだ・・・)

寝ぼけ眼で大きく伸びをしたとき、視界に人影が飛び込んだ。

「っ!」

反射的に後ずさると、後ろ手に当たるのを感じた。

おそるおそる振り返る。

「おっっ」

(沖田センセ・・・)

視線を戻す。

(斉藤先生・・?)

驚いて二人を交互に見る。

(な、なんで?いつから?)

二人の気配にまったく気付いていなかったことに頭を抱えた。

(・・・武士失格??)

大きく一つ溜息をついた。

両脇の二人は、気持ちよさそうに眠っている。

自分が置かれている何とも不思議な状況に首を傾げた。

 

(・・・川の字?)

 

母と兄と3人で眠っていた昔を思い出して、

何だかくすぐったくて笑った。

 

 

さわさわ・・・

 

 

頬を風が撫でる。

 

(こんな日も、いい・・・よね?)

 

幸せなこのひとときにセイは目を閉じた。

 

 

ねこや様、お待たせいたしました☆☆☆

リクエストいただいた、「守られてる」という感じ。
いつ、何が起こるかわからない緊張の連続な日々を過ごしている彼らに
ちょっとした幸福をと思って書かせていただきました。

「川の字」私の中で、理想の幸せ空間(?)です。
大事にされてるみたいな・・・?
そう思うのは私だけでしょうか(゜дÅ)ホロリ

どちらがお父さんで、お母さんなんでしょう^^;

リクエストに沿えてなかったら申し訳ないです(T▽T)
よろしければ、もらってやってください(汗)

リクエスト、ありがとうございました^^
またよろしくおねがいいたします(*/▽\*)

2003.10.27  空子

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