知るや君

 

守られていることに気付かずに、前をいく彼の背中をずっと追っていた・・・。




「暑いですねぇ」

沖田はセイと歩きながら、額に手を当てひさしを作り空を仰いだ。

「お体のほうは大丈夫ですか?」

セイは池田屋で昏倒した沖田を気遣い声を掛けた。

本当は、まだ療養していなくてはならないくらいなのに、

外の空気が吸いたいと近藤・土方を困らせた。

そこで、件の事件から医療の方面でも抜きんでてきたセイを

共につけるという条件で送り出されたのだった。

「だって、体がなまってしまうじゃないですかー。

誰かさんは過保護ですしねぇ」

「・・・ご迷惑でしたか?」

セイは不安になってうつむきかげんで問い掛けた。

「ちがいますよー。お礼に甘味でもご馳走しようかなと思って♪」

その言葉を聞いてセイはホッと胸をなで下ろした。

「さあ、神谷さん。まずはここに入りましょー♪」

「まずはって、何件まわるおつもりですか〜っ」

手を引かれながら、聞き捨てならない発言に抗議した。

「いいから、いいから〜♪」

沖田がとっても楽しそうに笑うので、

セイも久し振りの一緒の外出なので

嬉しい気持ちでつないだ手を少し強く握り返した。

 

 

「・・沖田先生、まだ食べるんですか?」

「神谷さん、もう終いなんですか?」

机を挟んで向かいに座った二人はしばらく、きょとんとお互いを見つめた。

沖田に連れられ3件目。

鍵善の葛きりは大好きだけど、さすがにもう入らない。

「それじゃあ、あとは散歩でもして帰りますか」

沖田が立ち上がる。

「だいじょうぶですか??」

立ち上がった瞬間、沖田の身体が傾いだのを見て、

セイは駆け寄り身体を支えた。

「いやだなあ。ちょっとふらついただけですよ」

「だめですよ。すぐに無理なさるんだからっ」

顔色があまり良くない。

出ようとする沖田を制して座らせた。

「もう少しだけ、休みましょう。ね?沖田先生」

沖田も正直に頷いた。

「手、まだ跡残ってますね」

セイの手を取り手抜き緒の跡が残る手首を撫でた。

「沖田センセ・・・?」

突然手を取られて、緊張してしまう。

(なに・・・?)

いつもとどことなく違う沖田にセイは戸惑う。

「さて、出ましょうか」

「は、はい」

突然の変わり様に追いつけない。

とりあえず、顔色も戻ったようなので、

安心して隣に立った。

 

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