西瓜
「よう、お前らちょうど良いところにきたな。西瓜あるぞ」
巡察を終えて、山口・相田とセイが廊下を歩いていると、永倉に声をかけられた。
その足下の水をはったたらいの中にはたくさんの西瓜。
「わあー。良いんですか?」
「うまいぜ♪ほらっ」
原田が豪快に頬張りながら一つセイに向かってよこした。
「ありがとうございます♪」
口に含むと、程よい甘さの果汁が乾いた口内に染み渡る。
「おいしい♪」
口に残った種を口に手を当てて手のひらにだす。
「ちがう、ちがう。種はこうやって出すもんだ」
原田と永倉はフッと種を庭先に向かって飛ばした。
それを見て、昔、兄と種の飛ばしっこして母に叱られたことを思い出した。
フッと飛ばしてみる。結構飛んだ。
「おー。やるな神谷。斉藤と平助は下手でなー」
「こんなの自慢にならないよー」
「上手くても嬉しくない」
二人はちょっと反論。
セイはもう一度飛ばしてみる。
「原田さんより飛びましたよ♪」
昔は上手く飛ばせなくて、下にポトリと落としていた。
ちょっと嬉しい。
「負けられっか!」
見てろとばかりに飛ばす原田。
楽しそうなセイに、斉藤・藤堂ももう一度挑戦してみる。
「何だか騒々しいな」
沖田と並んで廊下を歩いていた土方が眉間に皺を寄せた。
「あ、西瓜♪」
沖田は目敏く見つけ駆け寄った。
隣に座る斉藤と話をしていて
よそ見していたセイが持つ西瓜に沖田がパクりと食いついた。
「お、沖田先生食い意地はりすぎっ!」
突然の出来事にセイは真っ赤になって抗議する。
「おいしいですね♪」
食べてまったそれをセイから受け取り沖田は満足そうに笑った。
(確信犯なのか天然なのか、あんたのはどっちだっ!)
その様子を見ていた斉藤は、むむむと眉をしかめた。
土方も座り込んで一つ斉藤から受け取る。
「おっ?みんなでうまそうなもの食べてるな」
黒谷から帰ってきた近藤も加わり、
たくさんあった西瓜もきれいになくなった。
少し日が傾いて幾分か風が出てきたせいか気持ち良く、
しばらくみんなでまったり。
「さてっと、掃除しちゃいますので、みなさん上がってください」
セイは着物の袖をはしょって箒を手にした。
「俺達も手伝う」
「ありがとうございます」
相田と山口の嬉しい申し出に笑顔で答える。
夏の盛りの午後、久し振りに童心に帰った時間だった。
スイカの種、祖父の家でよく飛ばしっこしました。
2003.07.31 空子
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