七夕
「今日は本当に星がキレイですねぇ」
天気が良く星も綺麗だったので、
セイは沖田と連れだって鴨川の河原へと涼みにきていた。
「沖田先生、あれが牽牛星、こちらが織女星ですよ」
「ああ、あれが年に一度だけ会えるという・・」
「昔、母上によくお話聞いてたんです」
「私も姉さんたちが話しているのを聞いたことありますねぇ」
年に一度しか会うことが許されないなんて・・・
(私も女子に戻ったら、沖田先生にほとんど会えなくなるのかなあ)
「切ないなあ」
「え?そうですか?年に一度でも会うことができるなら、
その日を励みにがんばれるじゃないですか♪」
「はい?」
「近藤先生なんて年に一度も帰る機会はないんですよー。
会えるとわかってるならがんばれるでしょ?」
「なるほどぉ。でも・・」
理解はしても、そこは女の子。
好きな相手とは、できればいつも一緒にいたい。
「一緒にいたい方でもいるんですか?」
沖田が笑顔で聞いてきた。
(あんただよっ黒ヒラメ〜っ)
叫びたいけどそういうわけにもいかず、セイはそっぽを向いた。
「まあ、神谷さんとはなればなれになってしまったら、
一年中心配してないといけないから、離れたくはないですねぇ」
ドキリとして沖田を見上げた。
「え?」
その先を期待してセイは手を握り締めた。
「近藤先生も土方さんも、近くにいてもらわないとね♪」
(そんなことだろうと思いました)
ガックリと肩を落とす。
「あっ、神谷さん、流れ星ですよ。
願い事となえるんじゃなかったでしたっけ?」
「口に出しちゃ駄目なんですよ」
夜空から沖田に目をもどすと、
子どものような表情で目をつむる沖田がいた。
「神谷さん、少しヒザ貸してくださいね」
沖田は一つあくびをするとセイの投げ出した足を枕にごろりと横になった。
「ちょっ、先生っ」
「大丈夫ですよー。まわりもしてるじゃないですか」
沖田が涼しい風に目を閉じた。
セイは空を見上げた。
(その時がくるまでは、沖田先生のと共にいられますように)
空にはたくさんの流れ星。
願いが聞き入られるような気がする。
織女星のように、しおらしく
年に一度だけの逢瀬を待ち焦がれることなんて自分にはできない。
普通の女子のような幸せは望めないかもしれない。
でも、ずっと側にいることが叶うなら、
男装していて良かったと前向きに考えることにしたセイだった。
七夕って、いつの時代からの行事なんでしょうね?
2003.07.01 空子
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