蒼天の下で、君を想う



その日は朝から暖かく、空にも一面の蒼が広がっていた。


昼間でにすべきことを終えてしまったセイは、ただぼおっと縁側に座っていた。
いつもならば総司に誘われて甘味処を訪れるのが常であったが、今日は用があるらしく出かけてしまっている。


「うーーーーん。折角だし、散歩でもしようかな・・」


丁度花も水も綺麗な頃でもあるし、とセイは屯所を出た。

そのまま鴨川の方へと足を進める。


「うっわー、すごい、満開だ!」


川べりに植えられた桜の木々は、その枝いっぱいに花を咲かせていた。
桜は良くも悪くも兄を彷彿させる。
年が経つにつれて桜と共に蕾を開くのは、悲しみだけではなくなりつつあった。


ゆっくりと河原の風を愉しみながら歩いていると、前方に見慣れた背中を見つけた。
一回り以上も離れた、それでも師とも兄とも違う感情を抱いたひと。

それに追いつこうとしてセイは、歩みを少し速める。


「副長っ、何をなさってるんですか?」


「!!・・・・神谷か」


不自然な迄に動揺する土方に、セイは悪戯めいた笑みを浮かべる。


「申し訳ありません、句作の邪魔をしてしまいまいしたか?」

「してねぇよ!」

「別に隠さなくて良いんですよ〜」

「うるせぇ!」


戦や隊務のときの戦鬼の貌からは想像すら出来ない、子供のような顔がなんだか嬉しい。


「ご一緒しても、よろしいですか・・・?」


恐る恐る訊ねてみる。
一緒にいたい、とは勿論思うのだが、こうしてほとんどない時間の合間に一人でいたいと
思うのなら、それを邪魔したくはない。


「・・・好きにしろ」


ぶっきらぼうにも聞こえるが、土方なりの 一緒に来い の意味を含んでいる。



「桜、綺麗ですね」
「俺は梅の方が好きだがな」
「豊玉先生らしいですね」


軽く揶揄したセイの台詞に土方は顔を赤くする。

「っ!どうしてお前はそう・・・!!」
「ハイハイ、すみませんでした〜」


そこから暫く、ほとんど言葉を交わさずにただ並んで歩く。
沈黙が重くない、そんな空気は双方にとって非常に心地よいものであった。


「平和だな」
「そうですね。・・・私たちも、この桜のように在りたいと思います」
「何?」
「――花は桜木、人は武士。・・兄が口癖のように言っていました。このように潔く在りたいと」
「・・・・まで、・・・・・だろうな」
「え?」

土方が何か言葉を発したが、風の音に紛れてセイの耳には途切れ途切れにしか届かなかっ
た。


「なんでもねぇ」


だけど。



―――いつまでお前は、俺の隣を歩くんだろうな




何をいまさら、という様にセイは相好を崩した。



「私が死ぬまで、でしょうね」
「・・・聞こえてんじゃねぇか」
「推測ですよ。そう言った気がして」
「・・・・・・・」
「私が死ぬまで。もしくは副長が私に愛想を尽かすまで、隣にいさせてください」


土方の目を真っ直ぐに見つめてそう言うと、土方はバツが悪そうに目線を逸らした。


「俺かお前、じゃないのか」
「私が、です。命を懸けて、私より先になんて死なせません」


ひどく重い、絶対的な信念をセイは一言ひとことに乗せる。

「お前の命は、総司に懸けるんじゃないのか」

悋気などではなく、土方はただ素直に訊いた。

「武士としての私は勿論そうです。されど、武士としての私も・・・命を懸ける沖田先生
もまた、近藤先生や貴方に懸けておられます故」


凛とした態度でそう告げたセイは、何処から見ても武士そのものだった。



「では、女子としてのお前は?」
「・・・・言うまでも、ないでしょう?」


こうしたとき、セイには適わないと土方は密かに思う。
此れ迄遊んできたような、普通の女とは違う強さ。
それでいてふとした瞬間に見せる女子特有の愛らしさ。
そしてまた其れ故に愛しくてたまらないとも思う。


「やけにあっさりだな・・・」
「私の誠の一つですから。でも副長、決して簡単に口にしているわけではないんです。
命を懸けるということは、死んでも良いということではないですよね。貴方を生かし、私も生きる覚悟、です」


その覚悟の中に自分がいるということが嬉しいような、或いはもっと深い、救いのような気がして熱くなる。



「俺で、良いのか」

「・・・はぁ!?何かあったんですか、副長?今日は何だか変ですよ?」

「春がそうさせるんじゃねぇか。お前は・・どうして総司じゃなく、俺を選んだ」


明日雪でも降るんじゃないかと思うくらい珍しい土方の質問に、セイは目を丸くする。


「何故でしょうね。でも・・・好きだから じゃだめですか?」

「っ・・・」

そのまま抗いもせず、ただ泣いてしまいたいと土方は思った。
もしもセイが同じ質問をしたとしても、きっと自分も同じことを想うのだろう。


例えば外見が好みだとか、強さに惹かれたのだとか。
理由をつけようと思えばいくらでも付けられようが、それはとても愚かしいことのようである。

言葉で説明のつくものでなく、ただ突然に、衝動のように突き抜けた想いなのだ。


なんとなく負けたようで悔しいため絶対に言ってはやらないが、離したくない、離れたくないと思う。
かなうならばずっと自分の手が届くところに置いておきたいとも。


「お前がいつまで俺といるか。その答えに後者を選ぶなら、お前は死んでも俺のもんだな」

にっ と勝ち誇ったような笑みを浮かべて土方が言う。


意地っ張りで照れ屋な土方の、精一杯の告白と独占欲がそこに込められていた。


「・・・はい!!」


滅多に聞くことが出来ない、土方の自分への思い。
それが嬉しくて、嬉しすぎてセイの瞳が少し濡れた。



「今日は非番だったな。もう少し寄り道して帰るか」

「はい!」


この乱世をいつまでこんな風に満たされた気持ちで過ごせるかは分からないけど。
例えば絶望の淵に立たされても、それでもこの日交わした想いだけは、希望のままで在って欲しいと願い、
二人はまた同時に歩き出した。



 

「風の足跡」みるくさんから頂きました(*^∇^*)
リクエストさせて頂いたのは「歳セイ」で

セイちゃんと幸せな感じでお散歩してもらえると嬉しいな

と図々しくもリクエストを(〃'∇'〃)ゝエヘヘ
考えてみますとリクエストさせて頂いたのは初めてかも・・・。
みるくさんの歳さんとセイちゃんのお話大好きなのですv
素敵すぎて嬉しすぎです(*^∇^*)

ありがとうございました^^
これからは、あちら一本かな。
ご活躍楽しみにしております☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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