うそつき

「神谷はーん」

刺すような日差しの中、隣の敷地内にある大木に足を掛けて上る神谷の姿が見える。

どうやら遊んでいた凧が飛ばされて枝に引っ掛かってしまったようだ。

手を伸ばすセイの危なっかしい様子に目が放せない。

(総司はいねえねかよ)

ちっと舌打ちをすると歩み寄る。

「足をそこに掛けろ」

「ふ、副長っ?」

思いもかけない人物の登場にセイが体勢を崩す。

土方は咄嗟に両腕を延ばした。


「…あれ?」


「このバカがっ!」



きょとんとしたセイの間の抜けた声と、確かな人の重みに土方は安堵の息を漏らす。

「…あの、副長?」

肩に担がれた状態のセイが、どうしたらよいか分からずに不安そうに声を掛ける。

「…ケガはないか」

「はいっ」

慌てた様子でセイがわたわたと体を捩る。

「暴れるな。落とすぞ」

「すみませんっ」

軽いセイの身体を降ろすと、木の幹に足を掛け器用に凧を降ろし子供に手渡した。

「ありがとう!」

子供たちが声を揃えて頭を下げる。

一寸遅れてセイも頭を下げる。

「気にするな」

ポンポンポン子供たちの頭に手を置き、最後にみなより大きなセイの額を弾いた。

「いたっ」

額を押さえるセイを見て子供たちが笑う。

楽しげな笑い声を背に歩き出した時、クックッと押し殺して笑う長身の男が一人。

「鬼の副長も形無しですね」

「見てやがったのか」

にっこりと笑う沖田に舌打ちすると、屯所に足を向ける。

「童は好きじゃねぇんだ」

「嘘つき」

背後に笑いを含んだ声を受けたけれど気付かない振りをする。

歩きながら知らず頬が緩むのを感じて頬を一つ叩くのだった。

 

土方さんって、面倒見良い人ですよね。子供に慕われそうですよね^^
2007.07.25 空子

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