セイが縁側でのんびりと本を読んでいると、ふいに大きな影がさした。

「いっちょ前に春画本でも見てんのか?」

影の主は原田だった。

「ちっ、違いますよ」

セイは真っ赤になって抗議した。

「なんでぇ。つまんねぇな」

原田はチェッと舌打ちして去っていった。

手には、以前明里に読ませてもらった万葉集。

比較的読みやすかったので、

時間ができたときにと思い借りてきたのだった。

読みながら、自分に当てはまる歌があったりして微笑んでしまう。

「何ニヤニヤしてやがる」

「あっ」

土方が言いながら本を取り上げた。


 


前日も 昨日も今日も 見つれども

明日さえ見まく 欲しき君かも

(おとといも 昨日も今日も会ったけど

明日も君に 会いたい) 

 


「ふん。ありきたりな歌だな」

言いながらも気になるのかパラパラと頁をめくっている。

「え〜、副長だって似たようなの作ってたじゃないですかー」

「あ?」

「え〜っと、知れば迷い、知らねば迷う恋の・・っ」

最後まで言い終わる前に土方に口をふさがれた。

「て、てめっ」

暴れるセイの口の端を引っ張り言葉を発せないようにしてしまう。

「余計なことをというんじゃねえぞ童」

「はひゃひへひゅやひゃひ〜っ」

セイは涙目になって訴えた。

 

 

「お二人とも大人気ないですねえ」

いつからいたのか沖田が本を拾い上げて言った。

「良い歌ばかりですねぇ。作者の気持ち何となくわかるような・・」

「なに〜?」

土方とセイが同時に声を上げた。

「だって、ホラ。甘いものをしばらくお預けになったら、

同じような気持ちになりますもん」

沖田が指さした歌は、会えない恋人へと綴った歌だった。

聞いていた二人はがっくりと肩を落とした。

「子供みたいに喧嘩しないでくださいね〜」

(お前にだけは言われたくないっ!)

去る沖田の背中に向かって、

残された二人は同じことを心の中で叫んでいた。

 

 

「ガキが三人・・・」

本人達に聞こえないようにつぶやいた斉藤に、

部屋に居合わせた平隊士達も頷いていたという。

 

年を重ねても子供でいたいなぁと思うのは
自分が年をとったからなのでしょうか・・・。

2003.07.16 空子

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送