良 い 男 <原田左之助 25歳細かい事は気にしない男気あふれる青年で、見掛けも悪くなく女子にもてる> 「そう解釈してんだけどなあ」 縁側にどっかりと座り込んで原田が口を開いた。 「なに自画自賛してんですか。ホントの良い漢というものは 自分のことをそういうふうには思わないものじゃないんですか?」 セイが干してあった洗濯物を取り込みながら言う。 「ひでえなぁ神谷」 縁側へと取り込まれた手ぬぐいで涙をふくふりをする。 「せっかく洗ったもので遊ばないでくださいね」 言いながら手際良く洗濯物を取り込んでいく。 「ふむぅ。神谷はオレ様の色気には傾かないか」 冗談なのか本気なのかわからない口調で言った。 「何おっしゃってるんですかー」 セイはあははと笑った。 「所帯でも持てばめんどくせー掃除とか洗濯とかしなくてもよくなるのかねぇ。神谷どうだよ?」 「男を口説いてどうするんですかー。あ、お暇なら手伝ってくれませんか?」 「おー」 原田は慣れない手つきでちらばった洗濯物をたたんでいく。 何気に一生懸命な原田を見てセイは吹き出した。 「な〜に笑ってやがんだよ神谷」 「いえ。原田さん、きっと良いだんな様になりますよー」 笑いすぎて泣き笑いの目をこすりこすりセイが言った。 「そうか?」 よくわからんと言いたげに原田は視線をまた手元に戻した。 「お?なんだ左之、神谷の尻に敷かれてるのか」 用事で出ていた永倉が縁側で洗濯物と格闘している原田に声を掛けた。 「何言ってんだ、ぱっつあん?」 「お前を亭主にする女は幸せだって言ってんだよ」 セイもつられて笑い出した。 原田はますますわからんといった顔をして首をかしげた。 セイと永倉の笑い声が屯所に響き渡った。
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