中村から救ってくれたのだと嬉しく思っていたセイは、

数分後にはがっくりと肩を落としていた。

呼ばれたのは沖田に時間ができためで、

神谷流の稽古をつけてくれるとのことだった。

嬉しいけれど、恋人であるはずの彼は

この状況を見ても何も思わなかったのだろうか・・・?

セイは溜め息をついた。

 

 

 

長時間ではないけれど神谷流の稽古をつけてもらい、

夜の巡察に間に合うように帰ってきた。

水浴びをする沖田の側で、ヘトヘトになったセイが座り込んでいる。

「かみやさーん」

呼ばれてセイは立上がり手ぬぐいを渡す。

その光景を見て、原田と永倉が近寄ってきた。

「お前、ホントに可愛いなあ。総司なんてやめて俺にしろよ」

かいがいしく世話を焼くセイに原田がちょっかいを出した。

「だめですよう。神谷さんは渡しません」

濡れたままの身体でセイをぎゅっと抱き締める。

「やっ、やめてくださいっっ」

バシンッと平手打ち。

「あ・・」

「すぐに手が出るんだからなぁ」

沖田はクスンと泣く振りをした。

「しっ、知りませんっっ」

セイは真っ赤な顔で走っていった。

「総司、お前楽しんでるだろう」

永倉に図星をさされて沖田は苦笑した。

いつまでたっても触れ合うことに慣れないあの娘が愛しいと思う。

セイの後ろ姿を見送る沖田が幸せそうで原田は頭をかいた。

「あ〜っ、見てらんねえ。いこうぜ、ぱっつぁん!」

沖田に蹴りを一つお見舞いすると、二人は部屋へと入っていった。

 

 

 

「しんっじられない!」

(人が見てる前であんなことするなんて!)

セイは肩を怒らせて廊下をずんずんと歩いていく。

行き先は文武館。

素振りでもして気を紛らわせたい。

晴れて思いが通じて一か月。

女子の喜びを知ってから、

今まで以上に自分が女子だということを

一生懸命に隠そうとしてるのに、

沖田は今まで以上に触れてくるようになった。

それが嬉しくて、恥ずかしくて、感情を押さえることが難しいのだ。

セイは竹刀を握ると、軽く素振りをした。

人一倍量をこなさないと女子の自分が皆に追いつくのは難しい。

以前はがんばらなくちゃと必死になっていた。

でも、神谷流の稽古を始めてから、

いろいろな可能性を女子の自分にも与えてくれる剣術を

つらいとは思わなくなった。

雑念を払うのにもセイには素振りは良いらしい。

 

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