「おいしい☆☆」
「よかった」
正坊と顔を見合わせておいしそうに和菓子を頬張るセイを見て明里が微笑んだ。
「あ〜っ、総司兄ちゃんので最後やー」
正坊がぷくうと頬を膨らませた。
「また買うてきてあげるからね」
明里が頭をなでた。
「いややー。今食べたいっ」
素直に感情を表すようになってくれたのは嬉しいけれど、
この場合は少し困ってしまい明里は苦笑した。
「正坊、一緒に買いにいきましょうか」
沖田が提案した。
「そんな、私が行きます」
セイが慌てて言った。
「いいんですよー。良い機会ですから、
湯船にでもゆっくり浸からせていただきなさい。
体が冷えてるようですからね」
沖田がセイの頬をなでた。
「あ・・」
セイは明里を見た。
「用意してあるんよ」
「それじゃあ正坊、行きましょうか」
「うん♪」
沖田の袖を引っ張って正坊が促す。
(気を利かせてくれたのかな・・)
手を振り家を出た沖田にペコリと頭を下げた。
「さ、おセイちゃん。ゆっくり使うてきて」
「うん。ありがとう」
実は最近急に冷え込んできたので、手足が冷えて仕方がなかったのだ。
「はぁ〜♪」
久しぶりの湯船はやはり気持ち良い。
普段は体をふく程度しかできないので、体が芯から暖まることがないのだった。
(あ、こんなとこにも痣作ってたんだ)
腕の内側、妙なところが青黒くなっている。
(原田さんと組んだときのだ・・)
次の日筋肉痛になったっけ。
(・・適わないよなぁ)
「・・・・」
ついで(?)に例の接吻事件も思いだす。
温かい湯船の中、さらに体温が上がるのを感じた。
『順番が違います』
あの時、なんであんなこと言っちゃったんだろう?
(あの時、ホントは何を言おうとしたんだっけ・・?)
一緒にいろんな所へ出かけてみたかった気がする。
いっぱい話がしたいと思った気もする・・・。
湯船に浸かると、いろんなことを考えてしまうのはなぜだろう?
「よぉ、総司じゃねぇか」
目的の品を大事そうに手に抱えて
ホクホク顔の正坊と歩いていた総司は、
突然の聞き慣れた声に振り返った。
「は、原田さんっ」
存在感たっぷりに歩く原田だった。
「おー、坊主も一緒か」
沖田の影に隠れる正坊の頭をグリグリと撫でた。
「ってことは、妓のとこに神谷もいるんだな。俺も行く」
勘の働く原田に沖田は慌てた。
たぶん今戻ったら間が悪い。
「あー、原田さん。まだおつかいの途中なんですよー。ね、正坊」
同意を求めるように正坊を見下ろした。
「ウチ早よ帰りたい」
愛しそうに包みを抱えてキッパリ言う正坊にガックリと肩を落とした。
「そうだよなー、坊主。早く帰ろうなー」
正坊をヒョイと肩に担ぎあげて原田は歩き出した。
(ごめんなさい。神谷さん・・・)
でも、面白そうだから良しとしましょう。
そんなことを考えながら総司は歩き出した。
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